『JCJC』(ジェイシージェイシー)によせて
【DATA】
定価3,000円(税込)SUS-007
レーベル:櫻梅生徒会
2014年3月12日発売&配信
卒業式の参加チケット・暗記が出来る歌詞カードとチェックシート・ みやまゆとチャンユメの卒業メッセージカード・チェキ風ブロマイド・ 銅像しおりの計5大ふろく付
1:私立櫻梅女子中学校校歌 (2:49)
2:サボッタージュ (5:40)
3:じこしょ☆(15歳編) (1:26)
4:5時間目 (2:32)
5:ベンジャミンのテーマ (2:18)
6:由理・ロッテンマイヤーに捧ぐ (2:35)
7:少年少女 (4:15)
8:花とゆめ (1:42)
9:まどろみDUNCE (4:55)
10:たんきゅんS・O・S (4:01)
11:教えてよ、教ちゃん (3:45)
12:たんきゅんてんやわんや (3:06)
13:屋上トマソン (4:49)
14:用もないのに。 (3:17)
15:ティーパーティーパーティー! (3:40)
16:ハナネコノユメ (2:38)
17:百約束の物語 (5:41)
18:私立櫻梅女子中学校校歌(連弾) (1:56)
(TOTAL 61:05)
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もし自分が中学生だった頃にたんきゅんのみやまゆとチャンユメがクラスメイトだったらどうしていただろう? と考えたら、自分が男子校出身だったという事実にぶつかってしまった。思い出すのは、薄暗い教室、薄暗いトイレ、薄暗い体育館。傾いた共産主義国の施設のようなイメージばかりが、なぜこれほど記憶に残っているのだろう?
たんきゅんの作品には、ペーパーのようなグッズが多く付属してくる。本当に女子中学生はこんなモノを作っていたのだろうかと考えても、再び男子校の壁に当たってしまう。確かめようがないのだ。「女子中学生のせつない気持ちを歌うガールズポップデュオ」がフィクションの存在かどうかに関わらず、たんきゅんは常に私の手の届かない場所にいる。
そして、たんきゅんを見ていると私はなぜか無性に不安になる。たとえば、しりあがり寿、サエキけんぞう、加藤賢崇、信藤三雄、岸野雄一、久住昌之といった、これまでたんきゅんが関わってきた人名を挙げて、「ああ、そういうサブカルね」と知った顔をすることもできるだろう。けれど、女子中学生の格好をしたたんきゅんは、そうしたカテゴライズに収まりきらない何かがある。それは、「JCJC」に収録されたノスタルジックな楽曲を聴くと「邪気の抜けた戸川純」といった印象を持つことにも関連する。ノスタルジック、ゆえに牧歌的とはならないある種の「不可解さ」がたんきゅんの周りには渦巻いていて、それが魅力となっているのだ。
たんきゅんの「JCJC」での歌唱は、今で言うならでんぱ組.incに通じるような、腹から声を出さない唱法だ。そして「中学卒業フルアルバム」と銘打たれており、まるで中学生までしか在籍できないアイドルグループ・さくら学院(BABYMETALもその派生ユニットだ)のようでもある。ただし、たんきゅんには「アイドル」といった雰囲気がない。むしろ、どこか禍々しい。それは、思春期のグロテスクな感情の揺れを、さらりと歌に込めているからかもしれない。
サウンド・プロデュースは郷拓郎で、彼が多数の楽曲の作詞作曲も担当。校歌風の楽曲や、1960年代~80年代の歌謡曲風の楽曲も手掛けている。彼の在籍するdetune.やグレンスミスのファンの期待にも応えるメロディーとサウンド・プロダクションだ。グレンスミスの仲間であり、図書館のメンバーでもある宮崎貴士による楽曲のメロディー・ラインの展開の美しさには思わず背筋が伸びた。そしてたんきゅんのメンバーが関わったラップ・ナンバーが2曲収録されているのも面白い。
そして「JCJC」は、「屋上トマソン」で不意にハイライトが訪れる。思春期の憂鬱に飲み込まれていくかのような歌詞とメロディー。突然激しいロックサウンドを響かせる「百約束の物語」も、聴き手の胸をいきなり揺さぶる。そして「私立櫻梅女子中学校校歌」のピアノ連弾でアルバムは幕を閉じる。
そんな終盤が生み出す聴き手の軽い動揺を置き去りにするかのように、たんきゅんは3月22日に「たんきゅんの卒業式」と題したライヴを開催する。その後の彼女たちの活動予定は、私にもわからない。でもそれでいいのかもしれない。たんきゅんのみやまゆとチャンユメが中学校で同級生だったとしても、自意識過剰で話しかけることもできない自分が容易に想像できてしまうのだ。卒業後のことなど、きっと聞けない。
だから、私たちは同じ教室にいても一言も交わさずに卒業式を迎えるだろう。「JCJC」は、勝手にそんな想像までしてしまうアルバムだ。
宗像明将(音楽評論家)
<サウンドプロデューサー・ごーきゅんこと郷拓郎から、たんきゅんへのメッセージ>
初めて二人に会った時は、なんというか、無視出来ない、如何とも言い難いインパクトがある、と思いました。そして、彼女達はどうやらそのことに無自覚で、ただ無邪気に、二人で楽しそうなことをやりたいだけということが伝わってきました。それまで僕は楽曲提供ということをほぼしたことが無かったのですが、この子達が知らない世界に飛び込む気なのなら、どうなろうが道連れになってやろうと思いました。1年半の活動期間中に、なんだかんだで曲が溜まり、いつの間にかこんなボリューミーなアルバムをリリース出来る運びとなりました。二人を応援してくださった皆々様のおかげでございます。最後に、みゃーとゆめへ。二人ともおつかれさま。君たちは多くの人々からご協力を得て、愛されて、幸せ者だね。あ、ところで、ライブ一回も見れなくてごめんね。
ごーきゅんこと郷拓郎(detune./グレンスミス/たんきゅんプロデューサー)
<総合プロデューサーまゆたんから、たんきゅんへのメッセージ>
女子中学生だった頃の気持ちを、みゃーまゆとチャンユメに託した約2年間。 歌ったり漫画を書いたり夜更かししたりみちくさしたり内職したり、とにかく自分が中学生の頃とほぼ変わらない感じで、ふたりは「たんきゅん」の活動をやってくれました。 そしてごーきゅんこと郷拓郎氏の天才的なソングライティングとアレンジによって、企画モノのおふざけユニットではなかったことが、判る方にはちゃんと伝わっているのではないかと思います。ちなみにたんきゅんは今後「女子高生の気持ちを歌うユニット」として活動することはありません。だってプロデューサーである私達にとって、女子高生は大人っぽすぎて、気持ちがよく判らないんだもの!w みゃーは美大を目指して、チャンユメはN.Y.に行って、ふたりとも恋とかしちゃうんでしょうね。結局私も一度もたんきゅんのライブは見れなかったけど、「みゃーまゆのママ」としてサブカル大御所の皆様を紹介してあげたんだからゆるしてねっ!
まゆたん(ミュージシャン/たんきゅんプロデューサー)